2008年6月16日月曜日

3 億キロと 3 ミクロン

Courtesy NASA / JPL-Caltech / Univ. of Arizona

着陸後 2 週ほどは土日も休みなくプレス・リリースが出続けていたが、 ここに来てようやく一休みのようだ。 Twitter のフェニックス君は毎日書き続けてくれているものの、 やっぱりペースは鈍りぎみかな。 おそらく次の会見では、TEGA の加熱中のオーブンからのガスについて、 質量分析計の最初の暫定的な結果が報告されることになると思われる。 何より水がどの程度含まれているか楽しみ。

日本時間で土曜の早朝に出たプレス・リリース (フェニックスが供給された土壌を調査、JPL サイト 6/13) には、 さっそく MECA の光学顕微鏡写真がいくつか公開されていた。 我らの惑星とは太陽系の始まり以来ほとんど別の道を歩んできた、 3 億 km 彼方の別の惑星からのはじめての µm オーダーの画像だ。 ここには、17 桁、 double 型でもちょっと困ってしまうめったにお目にかからないスケールの対比がある。

以下はキャプションなどをもとにした画像の素人解説。

1 枚目 (右上)。 Sol 17 に「振りかけ」られた土壌のサンプルの顕微鏡写真。 観察するサンプルをのせるための基板 (substrate) は粘着性のあるシリコーン樹脂でできているそうだ。 この基板は斜めに置かれた大きな車輪の端に並んでいて、上側でサンプルを受け取り、 回転して顕微鏡の前に持ってくる仕組みとなっている。

他の惑星のサンプルを探査機の分析にかけるということは、 バイキング以来およそ 30 年ぶりのことだそうで、 もちろん土壌の顕微鏡写真というのもこれまでで初めての記念すべきものだ。

スコップの中の土壌が凝集した塊 (clump) になっていることで話題にも問題にもなったが、 キャプションでは、この写真でも一回り小さなスケールでの塊が観察されていることに注意が促されている。 塊を構成している粒子そのものは顕微鏡の限界レベルの微細なものが大半だということだ。 図中の白線は 1 mm.

Courtesy NASA / JPL-Caltech / Univ. of Arizona

2 枚目。 この 2 つの画像は、大気中のチリ (左) と土壌 (右) との比較。 左のチリの方は着陸時に大気にさらされていた基板を sol 9 に撮影した既出の写真で、 右側は上と同じもの。

左の均一な感じのいくつかの比較的大きな粒は純粋な鉱物なんだろうが、 大半はぎりぎり見えるかどうかのすごく小さな粒子からなっている。 キャプションでは、右の土壌の写真でも、類似した微細な粒子からなっていて、 土壌がチリが集積したものから形成されていることを示しているとしている。 土壌の方において見られるそのチリの塊が何によって凝集しているのかということが焦点なのだろう。 白線はやはり 1 mm を表している。

Courtesy NASA / JPL-Caltech / Univ. of Arizona / Imp. Col. London

3 枚目。 より高解像度の原子間力顕微鏡 (AFM) にかけるために土壌粒子をしっかり固定する 様々な微小測定用基板 (micromachined substrate) の効果を試した写真のようだ。 基板がそれぞれ表面に違ったパターンをもっていて、 この中では左から 3 つ目の 5 µm 間隔の突起 (peg) を持つものが 最もよいというと結論づけられている。

この基板はロンドン大学インペリアル・カレッジ (Imperial College London) で製作されたもので、 今後使われることになる小型の原子間力顕微鏡の方はスイスのヌーシャテル大学 (Université de Neuchâtel) などによって製作されている。 この光学顕微鏡よりさらに 40 倍拡大できるというが、う〜ん、そんなものだろうか? どの図にもあるが、下側から伸びている不鮮明な影が原子間力顕微鏡の探針か何からしい。 5 本ほどあるそれぞれの帯状の基板の幅が 0.4 mm.

Courtesy NASA / JPL-Caltech / Univ. of Arizona

4 枚目。 3 段階の拡大写真。 画像上半分は、やはり一番上の写真と同じものだ。 下の左側は、そのうちのひとつの「塊」の拡大で、 上半分の緑っぽい部分はおそらくカンラン石 (olivine) だろうとしている。 火星のカンラン石の存在は軌道上やローバーの調査なんかからも調べられてて話題になってた気がする。 どういう意味合いの話だったかよく思い出せないけど。

問題の下半分の焦点を変えた画像が真ん中のもので、細かい粒子が凝集したものであることがよりはっきりしている。 右下の拡大図は、上の右側の白枠のもので、真ん中はこんなんとは違うでしょという話のようだ。 白線は 1 mm.

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さて、顕微鏡とは関係ないけれど、 sol 19 にはスコップがいままで 2 つあった掘削の溝の間を掘ったようで、 画像では 2 つがつながった感じになっている。 きちんと追いかけていなかったので、掘削された土壌が何に使われるのかはちょっと分からないが、 溝の方ではよりはっきりと白い部分が見えてきた。

短波長と長波長の 2 枚の左右の画像から昨日むりやり独自合成した立体写真を以下に。 3 枚の画像のうち左と右は同じもので、左のペアが平行法用、右のペアが交差法用。 もちろん疑似カラーだけど、公式には赤青メガネ用の立体画像しか発表されないようなので、 こういうのもあっていいかな。

溝の平行法・交差法兼用立体画像。擬似カラー

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