2008年6月21日土曜日

Sol 25 のフェニックス

Sol 25 は日本時間 2008/06/20 (金) 08:18 ~ 06/21 (土) 08:58 (米太平洋夏時間, PDT 06/19 16:18 ~ 06/20 16:58) ぐらい。

太陽黄経 (Ls) 88°, 太陽と地球との間の角度 29°.7, 地球までの距離 3.05 億 km, 太陽高度 3°.4〜47°.0

Twitter 翻訳

(Twitter / MarsPhoenix より。 火星現地時間はおおよそ)

Sol 25 00:54 (06/20 09:14 JST, 06/19 17:14 PDT)
お祝いの準備はだいじょぶ? おほん、いくよ。 はっけーん!!!!! そう、、 火星の み ず の こ お り! やったー!!! これまでで最高の日!!
Sol 25 01:03 (09:23 JST, 17:23 PDT)
やったやった! いくつか白い物質のかたまりに注意してたら、 それが消えちゃったんだ! 昇華したんだ! つまり塩のわけがない、氷だよ。 http://is.gd/lFa
Sol 25 02:08 (10:30 JST, 18:30 PDT)
この栄誉は、ぼくをここに送ってくれた科学チームと技術チームのもの。 場所の選択は最高だった。 すばらしいニュースはここでも www.nasa.gov/phoenix
Sol 25 16:59 (06/21 01:45 JST, 06/20 09:45 PDT)
CO2 の氷か H2O の氷か: CO2 の氷にとっては温度が高いし圧力も低すぎるんだ。 科学チームが午前 10 時 PDT/午後 1 時 EDT [日本時間午前 2 時] からここで音声中継をやるよ。 www.nasa.gov/newaudio
Sol 25 17:23 (02:10 JDT, 10:10 PDT)
いまからブリーフィングが www.nasa.gov/newsaudio で始まる。 今日中に 800-873-2093 でも聞けるようになるよ。
Sol 25 18:42 (03:31 JDT, 11:31 PDT)
今日のブリーフィングの MP3 は、 今日もうちょっと後で http://is.gd/CjW に置かれるよ。 記録も完成し次第すぐにね。

ロー・イメージより

(Sol 25 Raw Images より後日作成)

Sol 24 の『ドードー=ゴルディロックス』(Dodo-Goldilocks) の画像で左下にあった白い塊が昇華しているのが確認され、 この日の会見で氷であるとの判断が示された。 Sol 25 の午前中に撮影された画像 (左上) では、右側から日が射しており、 前の画像で影であった部分がはっきりと確認できる。

一方、次の分析のための準備が進められ、TEGA の最初のサンプル投入口の隣側のフタを開こうとしたようだが、 最初のサンプルの土がじゃましてうまく開けていない (右上)。 この画像で最も右側のフタが最初のサンプルのためのオーブンの投入口であり、 こちらもフタの左側が半開きになっているようにみえるが、 これはおそらくふるいの上で土壌を均すためにそのように設計されたものなのかもしれない。 フタの左側に落ちた土は画面向こう側の下に落ちる手筈だったと思われる。

さらに『白雪姫』(Snow White) 側では今後の分析に使うためのサンプル採取が行われた。 右の上から 2 番目の画像はスコップ内に採取された土壌である。 下段の左右の画像は例によって掘削溝の平行法ステレオ写真。 一番左に奥行きの短い溝が増えているので、サンプルはここから表層部分が採られたのかもしれない。 撮影は 18 時頃で太陽はほぼ真西にある。 火星の自転軸の傾きは 25° であり夏至が近いので、太陽高度もこれと大きく違わないと思われる。 画像奥が窪んでおり、採掘場所がポリゴンの頂上付近だとわかる。


#6966 (Sol 25 10:51)

#6944* (Sol 25 14:30)

#6988* (Sol 25 17:01)
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona / Max Planck Institute*

#7008 (Sol 25 17:58)
左眼用

#7009 (Sol 25 17:58)
右眼用
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona

2008年6月20日金曜日

フリーズ・ドライ

20 日朝、大はしゃぎの Twitter が告げてくれたように (参照 Sol 25 のフェニックス)、 『ドードー=ゴルディロックス』で見つかっていた白い層の正体が 氷以外にありえないという自信あふれる宣言がなされた。 前の掘削時に白い層からこぼれ落ちていた小さな塊が数日して消えたことから、 昇華したのだという判断みたいだ。 プレスリリースはこちら: Bright Chunks At Phoenix Lander's Mars Site Must Have Been Ice, アリゾナ大学。

うーん、あったか! しかも氷が地表のわずか数 cm 下に隠れていようとは、おどろき。 こんなに浅ければ、ダスト・デビルなどで始終地表に現れてきてしまうだろうに。 いずれまた土で隠されるにしても、氷は一方的に減ってしまいそうな気がする。 何かの仕組みで再供給しなければならないように思えるのだけど。 わからん。

とはいえある意味、火星での水の氷そのものの発見が大ニュースというわけじゃない。 水の氷は以前から極冠などにあることがわかっていた。 60°ぐらいだかの緯度より上で地下に大量の水分があることも、 軌道からのガンマ線の計測で示唆されていた。 輝く極冠は、火星を望遠鏡でのぞいて真っ先に目立つ存在で、 それが季節ごとに変化する様は、 美しさにため息をつくアマチュア天文家にとっても、 そのダイナミクスを思い巡らす惑星科学者にとっても 火星でどこよりも興味深いところなのだ。

火星の南極と北極は軌道のいびつさや高度の非対称さから、 違った振る舞いをしててそれも面白いんだけど、 夏でも消えない北極冠には氷が直に表に出てくる。 一方、冬が来ると雲に覆われるとともに、厚いドライアイスの霜が降り、 それはフェニックスのいる場所にも達する。 火星の大気は薄いながらほぼ二酸化炭素だから、大気が凍っていくのだ。 大気が凍っていくとははたしてどんな光景だろう。 そして再び暖かくなると、激しく二酸化炭素を吐き出していく。 とにかく大地と大気が謎めいたダイナミックな語り合いをしているところが火星の極の姿。 フェニックスはこれからそうした火星の秘密の会話の一端を我々に明らかにしてくれるはずなのだ。

昼と夜では飽和水蒸気量がすごく違う

白い氷を実際にとっての分析はこれから本格的にはじまるのだろうけれど、 正直、消えたのが確認されただけで氷と言い切っちゃって大丈夫? と素人考えでちょっと心配してしまう。 一体、火星のあの環境の中で氷ってどのくらいの速さで昇華するものなんだろう? いくらかでも見積もれたりできないだろうか?

温度をえいやっと一定に決めといて、氷の塊もほややっと定めとけば、 大気の水蒸気の圧力ってのは、いわばまあ、塊にぶつかってくる水の分子の数なわけだ。 んで、氷といえどもちょっとはブルブルしているから、 分子が飛んできた勢いの一部を氷のどっかの分子に与えちゃえば (つまり熱を与えてれば) 分子は氷に引っ付いちゃう。 ブルブルのタイミングがよければ (気化熱を奪って) 逆に一部の水分子は、 他の水分子との間の力を振り切って氷から大気の中に旅立っていく。 大気の水の分子の数があるところで、氷から出て行くやつと入ってくるやつが同じだけになって、 つまりは平衡状態になる。 水でも同じこと。 そのときの大気の水分子の数がいわゆる飽和水蒸気圧 (に相当するもの)、 湿度 100 % の梅雨のじめじめ。 このときは洗濯物はいくら待っても乾かない。 火星の気圧と気温では氷が安定だから、昇華するには空気の乾き具合が洗濯同様重要なのだ。

などと思い出したところで、水の相図なんぞを取り出して眺めていると、 フェニックス君あたりの今の昼 (−30°C) の気候では、 飽和水蒸気圧は大雑把に 0.1 hPa のオーダーっぽい (大気の数 % 相当)。 でも寒暖の差が半端じゃないから、夜 (−80°C) には 2 桁以上も小さくなる。 大気中にどのくらいの水蒸気があるものなのかわからないけど、 氷の霜が降りるなどという話は聞いたことがないので、 夜でも飽和していないだろうから、まして昼は湿度 1 % 以下。 火星は相当にカラカラの洗濯日和なんだろう (というよりフリーズ・ドライだけど)。 やってくる水分子がほとんどないなら、確率的に偶然に飛んでいく水分子の数が昇華の速さだな。 気化熱とかあるし、形とか表面積とかあるし、熱伝導性とかは? 他の分子の存在 (圧力) も関係しそう。 頭いたくなってきた。 ちなみに関係しそうな範囲での水の相図をわりかしちゃんと書いてみたのが右上の図。

逆に冬季に温度が二酸化炭素が凍る −120°C 以下にまで下がれば、 飽和水蒸気圧は極端に小さくなるので (グラフもっと下まで必要だった…)、 さすがに飽和状態になるだろう。 このときってドライアイスの雪とともに氷の雪も降るのだろうか? それが土壌へ水が戻っていく仕組みなのかな? でもどうやって土の下に戻れるのか分からないけど。

追記 夜間は水蒸気が飽和すると教えていただいた。 つまり昇華した分、微量に霜が降りているっぽい。 夜間の飽和水蒸気圧に束縛されて、 少ないながらも地表が大気の水分をダイナミックに呼吸してるんだろう。 地下に厚い氷の海をかかえて、地表の土壌は条件が許す限りで水分であふれているのだという気もしてくる。
ドライアイスになるには暖かい

こうなると二酸化炭素の相図も知りたくなるのが人情で、ネットで調べる。 と、これが、たいがい一番下の圧力の目盛が 1 気圧とかだったりする — 火星に使えやしねえ。

なおも検索していたら二酸化炭素のハイドレートの図とともに Wikipedia でそれらしいものを見つけることができた。

二酸化炭素ハイドレートは、いわゆるメタン・ハイドレートの二酸化炭素版で、 氷の分子の容れ物の中に二酸化炭素を詰めたもの。 それが気体の二酸化炭素や水の氷と一緒に存在できるのは 2 番目の相図の灰色の部分らしい。

記事にはなんか火星との関係とか、氷よりも融けにくいよとか、 ごにょごにょ書いてあるが無視して相図だけながめる。 今のフェニックスの環境では、地球と同様に気体が安定なのだ (でなきゃ大気が凍る冬ってことだ)。 だからドライアイスは、何のおかまいもなく地球と同じようにあれよあれよと気体になってしまう。

ちょっと面白いのはフェニックスのいるところの気温が、 だいたい二酸化炭素の三重点の真下あたりだということだ。 ちなみに地球より小さな火星の内部はかなり冷えていそうで、水があったとしても温泉にはならない。 地下も同じぐらいの温度だとするなら、これはなかなか面白いことが起きていそう。 地下が氷が主として無理やり比重を 1 とすれば、 だいたい地下 10 m で、地球と同じ 1 気圧となって、 さらに 50 m にもなれば、三重点あたりに達することになる。 このあたりではもしかすると氷とドライアイスと二酸化炭素ハイドレートと液体二酸化炭素が あんなことやらこんなことやら、なんだか楽しげなことになっているのかもしれない。 いや全然わからん。 信じちゃだめだよ。 いずれにせよフェニックス君の腕にはちょっと深すぎるけど。

Sol 24 のフェニックス

Sol 24 は日本時間 2008/06/19 (木) 07:39 ~ 06/20 (金) 08:18 (米太平洋夏時間, PDT 06/18 15:39 ~ 06/19 16:18) ぐらい。

太陽黄経 (Ls) 88°, 太陽と地球との間の角度 29°.8, 地球までの距離 3.04 億 km, 太陽高度 3°.4〜46°.9

Twitter 翻訳

(Twitter / MarsPhoenix より。 火星現地時間はおおよそ)

Sol 24 00:02 (06/19 07:41 JST, 06/18 15:41 PDT)
@eaners 『ドードー鳥』(Dodo) は最初にテスト用に掘ったところで、 『ゴルディロックス』(Goldilocks) はすぐ右隣を 2 番目に掘ったところ。 その後で、ぼくはその真ん中を掘って 2 つの溝がつながったんだ。
Sol 24 04:29 (12:15 JST, 20:15 PDT)
@mtc [ローバーも Twitter に登録するよう伝えてというメッセージに対して] こっちにいるローバーたちにも会いたいなあ! 登録し忘れないようにいつも言ってるんだ。 それからカッシーニ [wikipedia] も。 彼は今、土星を回ってる!! (すごいと思わない?)
Sol 24 05:35 (13:23 JST, 21:23 PDT)
@vivaa 科学者の多くはあれが氷だって考えてる。 でも水も漏らさない議論をするために、 彼らはゆっくり時間をかけて検査したいって思ってるんだ。 待ちきれないよ!
Sol 24 05:49 (13:37 JST, 21:37 PDT)
@ZorkFox [メモリーについて] 2001 年のランダー [wikipedia] から受け継いだものさ。 128 MB の RAM とフラッシュ・メモリーを持ってる。 ぼくは毎日データを故郷へ送ってみてるから、こっちで全部保存しておく必要ないんだ。
Sol 24 06:13 (14:02 JST, 22:04 PDT)
@R0bbit 太陽電池が光をエネルギーに変える効率は 28 % だよ。 火星 + 北極圏っていう場所 + チリ = 大きな太陽電池が必要。
Sol 24 18:51 (06/20 03:01 JST, 06/19 11:01 PDT)
@Mat735 もういくらか TEGA の分析結果があるよ。 (予測してたことだけど) 表面のサンプルには氷がなかった。 もっと高い温度での結果を待ってるところ。 評価するにはさらに時間がかかる。

ロー・イメージより

(Sol 24 Raw Images より後日作成)

Sol 22 に起きたコンピュータの問題を受けて、 画像は中継衛星を駆使して当面の間、撮影当日にだけ送られるようになった。 おそらくそのためだろう、左上の画像のように一部が欠けたもの目立つものが増えたようだ。 ページからはリンクされていないものも多いが、同じ ID で欠けた部分を補ったものも多数みられる。 処理途中のものを掲載しただけかもしれないものの、 3 億 km 近く離れた惑星からの通信というのはなかなか大変なもののようだ。 東側の『不思議の国』(Wonderland) の『白雪姫』(Snow White) の掘削溝は右側が新たに掘られたようだ (左下図)。 また右の画像は、これとは反対側の観察が続けられている『ドードー=ゴルディロックス』(Dodo-Goldilocks) の掘削溝。 画像の左下の影の部分にあった白い物質のかけらは、暗くて非常にわかりにくいが消失している (このことがこれが氷であるとの判断の決め手となった)。


#6622 (Sol 24 11:31)

#6690 (Sol 24 16:15)

#6697 (Sol 24 11:46)
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona

2008年6月19日木曜日

宵越しの絵はもたねえ

Sol 22 にコンピュータに問題が発生したようで、撮影した画像が地球に送信される前に消えてしまったみたい。

時系列がちょっとはっきりしないところがあるけれど、sol 22 に撮影し、その日には送りきれなかった画像を sol 23 朝に送ろうとしたら、システム上の問題でうまく保存されていなかったよう。 このため、sol 23 は画像撮影を含めて科学調査をストップし、sol 24 には対策を講じた上での活動の指示が送られている。 このためだろう、サイトでは sol 23 のロー・イメージが欠番となっている。 以下は 6/18 付けのプレス・リリースの翻訳 (いくらか回りくどい文章が多かったので意訳した部分も。 誤訳もあるかも)。 これがリリースされたのはおそらく日本時間で 19 日朝、たぶん sol 23 の終わりごろ。

2008 年 6 月 18 日 — NASA の Phoenix Mars Mission は、 火曜日 [17 日、sol 22 に当たる] に異常な大きさの探査機ハウスキーピング・データ [housekeeping data, この場合は後述のようにコンピュータ・システム自体の管理上のデータ] を生成し、 一部の致命的ではない科学データが失われることになった。 フェニックスの技術者たちはこの異常が発生した原因を分析中である。 科学チームは木曜日 [19 日、sol 24] の探査機の活動として、 フェニックスでの夜間を隔てた科学データの保存に頼らないものを計画するとともに、 予備のデータ転送量を確保するために複数の通信中継も利用する。

フェニックスのプロジェクト・マネージャで NASA ジェット推進研究所の Barry Goldstein は、 「探査機は正常で完全に命令実行可能な状態にあるが、 この事象の根本的原因が判明するまで注意深くことを進めている」 と語っている。

通常、フェニックスは、 コンピュータ・ファイルの管理に関するわずかな大きさのデータを毎日生成しており、 このデータは、 探査機の不揮発性フラッシュ・メモリに保存において与えられるものとして、 高い優先度を得ている。 火曜日には、このデータの大きさが、 科学データをフラッシュ・メモリに保存することを妨げるほどに大きくなったため、 着陸後第 22 火星日 (sol) が終わった後、 火星の夜に探査機の電源が切られたときの水曜日 [18 日、17日火曜日の誤りかもしれない]、 コンピュータ上の残っていた科学データが保存されなかった。

これらの科学データには高い優先度を持つデータは含まれていない。 フェニックスの腕が掘り進んだ前に撮られた表面の画像を除けば、 ほとんどは再び撮影が可能な画像である。

夜間の休眠時、 電源が切られている間にフェニックスのフラッシュ・メモリに蓄積されるデータの容量に対する負荷を避けるために、 チームは、水曜日 [sol 23] の新たな科学調査をすべて取りやめるとともに、 火曜日に予定の容量を超過したファイルのハウスキーピングを行う種類のデータに対する優先度を下げるよう、 火曜日の午後 [sol 23 の火星の朝と思われる] にフェニックスに指示を送った。

「不揮発性メモリに頼らなくても科学的調査を継続できる」と Goldstein は語っている。 ミッション中に集められたほとんどの科学データは、 夜をまたいだ保管の必要なく、 それが集められたのと同じ sol の内に地球にダウンリンクされてきているが、 いくらかの sol では、チームは意図的に、 [火星の] 午後の通信回線に適合できる分を越えるデータを生み出す画像を含めている。 これは、次の火星の朝に通信回線が開いている間、 追加のデータをダウンリンクするための容量を活かすために行われてきたものだ。 ハウスキーピング・データの大きさが予定外のものとなった根本的原因が判明することになるまでの間、 短期的に科学チームは夜を越えてデータを保管するという方法を差し控えることになる。

一方で木曜日のスケジュールには予備の通信中継の機会が加えられたため、 この日の科学的探査計画は夜越しの保存の必要なしに十分なデータを生成できるようになった。 計画には溝の掘削、画像撮影、気象観測が含まれる。

Sol 22 のロー・イメージには、低解像度のものを含めてだけれど 100 枚以上の画像があるので、 この日は少し仕事をさせ過ぎたのかな。

フェニックスのコンピュータはこれまでも多くの探査機に使用されてきた RAD6000 と呼ばれるもので、 要するに IBM の RS/6000 の放射線に対する耐性を強めたバージョンらしく、 なんで、CPU は PowerPC の親戚筋。 細かい話になるけど、Wikipedia の記述を信じれば、プロセス・ルールが 1.1 µm, クロックは最高 33 MHz (35 MIPS), CPU 自体が持つ RAM が 128 MB ということだそう (en.wikipedia)。 上の記述をみると、この他の記憶装置としてはいくらかのフラッシュ・メモリのみをもつらしい。 GHz とか GB とかの単位に見慣れてしまった目にはロースペックにも思えるけど、 これまでの実績や、磁場や厚い大気に守られてない環境で宇宙線に耐えなきゃなんないことや、 90 年代に開発された探査機であることなんかに拠るんだろうな。

OS の方は何か調べがつかなかったけど、ローバーのスピリットやオポチュニティーには、 Unix 系のリアルタイム OS、“VxWorks” が使われているので同じかもしれない。 なんで感じとしては、/var ディレクトリがあふれちゃったよというところか? 違うか。

Sol 23 のフェニックス

Sol 23 は日本時間 2008/06/18 (水) 06:59 ~ 06/19 (木) 07:39 (米太平洋夏時間, PDT 06/17 14:59 ~ 06/18 15:39) ぐらい。

太陽黄経 (Ls) 87°, 太陽と地球との間の角度 30°.0, 地球までの距離 3.03 億 km, 太陽高度 3°.4〜46°.9

Twitter 翻訳

(Twitter / MarsPhoenix より。 火星現地時間はおおよそ)

Sol 23 02:06 (06/18 09:09 JST, 06/17 17:09 PDT)
新しい穴掘りを始めたよ。 溝は『白雪姫』(Snow White) て呼ばれてるけど、 まだ雪も氷も白いものも見えてこないな。 もっと深く掘らなきゃ。 http://is.gd/kVg
Sol 23 03:11 (10:16 JST, 18:16 PDT)
火星の料理の鉄人? まずオーブンを摂氏 1003 度 (1837°F) に設定いたしまして、 土のサンプルを焼きます。 それから秘密の食材を見つけ出します :D つまり鉱物ね。
Sol 23 03:27 (10:32 JST, 18:32 PDT)
@RetailerDepot, @Myles_Powers 永久凍土の層を見つけ出したいとは思ってるけど、 この白い物体がそうかどうかはわからないな。 科学チームは掘ってテストすることを計画してる。
Sol 23 03:35 (10:40 JST, 18:40 PDT)
@agahran ぼくの 2 つの太陽電池板には少しだけほこりが積もってるけど、何とかなるよ。 電力の供給は十分だし、予定してたのよりも多いくらい。
Sol 23 05:21 (12:29 JST, 20:29 PDT)
@Wingsfan15pc 携帯掃除機は積んでないけど、ローバーたちは、 太陽電池をきれいにしてくれる風とダスト・デビル [つむじ風] で 生き延びてきたよ (何年間も!)
Sol 23 07:19 (14:30 JST, 22:30 PDT)
@TaviGreiner ダスト・デビルは前にこの場所でも見つかってたよ。 ほんの 2 ヶ月前。 写真と説明はここにある。 http://is.gd/zZ1
Sol 23 23:58 (06/19 07:37 JST, 06/18 15:37 PDT)
@StuartForsyth 仲間たちがぼくのフラッシュ・メモリを検査できるように、 今日は新たな作業からは解放された。 でも今は木曜日にやらなきゃならない仕事のリストが並んでる。

ロー・イメージより

(Sol 23 Raw Images より後日作成)

Sol 22 から 23 にかけて画像データが保存されなかった問題を受けて、 sol 23 は画像撮影を含めて新しい作業が行われていない。

2008年6月18日水曜日

ポリゴン

Courtesy NASA / JPL-Caltech / Univ. of Arizona / Texas A&M Univ. / NASA Ames Res. Center

Sol 22 にはこれまでとは隔たった掘削地点『不思議の国』(Wonderland) の掘削が行われた。 右図がプレス・リリースでの公式画像。 この画像では raw image にある影を消してある! クレジットに追加されているテキサス A&M 大学とエイムズ研究所の力だろうか?

新たに掘った溝の名前は『白雪姫』(Snow White) だそうだ。 ロボット・アームの掘削可能域の西端あたりになる最初の溝は『ドードー鳥』(Dodo)、サンプルとされたその右隣が『ちっちゃなくま』(Baby Bear) だった。 今は『ドードー鳥』と『ちっちゃなくま』の間も掘られ、これらは一つながりの幅広い溝となっている。 この溝は『ドードー=ゴルディロックス』(Dodo-Goldilocks) と呼ばれることになった。 ゴルディロックスは『三匹のくま』の主人公である「金髪の女の子」のことだ (「ちっちゃなくま」は焼かれてなくなってしまったということのだろうか? ^_^;)、 さらに石などに付けられた名前まで目を向けると、『雪の女王』、『アリス』、『イカボッド』などなど。 どこの何の話かさっぱりわからない状態。

追記 『ドードー鳥』と『ゴルディロックス』は「溝」の名前で、 『ちっちゃなくま』は『お母さんぐま』 (Mama Bear) とともに『ゴルディロックス』のある「場所」の名前ということらしい。 ややこしい。
新たな溝『白雪姫』の位置

今回掘られた『白雪姫』はこれまでの掘削地点と対極のアームの稼動範囲の東端に近いようだ。 西側の掘削ではほんの 1.5 cm の掘削で氷とも塩ともいわれる輝く白い層が出現しているが、 『白雪姫』の方にはこうした白い謎の物質は sol 22 の掘削では見つかってない。 最初の掘削前に公開されていた土地の高さを示す左の図をみると、 掘削範囲の西側はいくらか低く、東側は盛り上がっている (図では赤い部分が高く青い部分が低い)。 フェニックスの着陸地点一帯に見られる多角形 (ポリゴン) 構造の、 多角形が接する溝の部分と、ひとつの多角形の内部とにそれぞれ対応するんだろう。

Courtesy NASA / JPL-Caltech / Univ. of Arizona

フェニックスが sol 0 で早速送ってきた写真 (右) にはっきり写し出されていたこの特徴的なポリゴン状の地形は、軌道上の探査機によって確認されていたもので、要するにまさにそういう地域にフェニックス君は送られたのだ。 地球の永久凍土地帯にみられるポリゴン構造と類似したこの地形は、マーズ・オデッセイ探査機のガンマ線スペクトロメータによる大量の水素原子の存在の確認とともに、この地帯の地下に水の氷が大量に存在するとされる大きな根拠となってる。 ニワカ知識をひけらかすのもなんなので、ポリゴンについてはこのページも読んでくださいまし。

また、永久凍土地帯のポリゴンやその他の地形のライフ・サイクルを図示したページとして、こんなのも。

地球のポリゴン地形については、Wikimedia Commons にこんな画像がある。

それぞれ、カナダのデヴォン島と、ノルウェーのスヴァールバル諸島の写真だ。 いずれにしても、地球ではこうしたポリゴンが発達するストーリーは、夏季に融け液体となった水が溝の部分に浸透し再凍結して地下に氷のくさび (氷楔) を作り出すというもののようだ。 つまり液体の水が必要。

一方で、火星の大気圧 (8 hPa 程度) は水の三重点 (6 hPa, 0.01°C) に近く、 初夏でも最高気温 −30°C 前後のフェニックスの着陸地点では、 地表で液体の水が安定して存在できそうもない。 H2O は氷より水のほうが体積が小さいので、 温度が多少低くても地下の圧力が高いところで水になる可能性はあるけれど、 相図を見る限りでは −30°C ともなるとちょっと無理そう。 果たして、火星のポリゴンは過去に形成されたものが残っているだけなのか、 いまでも地球とはちょっと違った仕組みで活動しているのか? 火星のポリゴンについては調べればいろいろ議論されているのだろうけど、 フェニックス君の活躍がそれについて決定的な情報をこれからもたらしてくれることは間違いない。

Sol 22 のフェニックス

Sol 22 は日本時間 2008/06/17 (火) 06:20 ~ 06/18 (水) 06:59 (米太平洋夏時間, PDT 06/16 14:20 ~ 06/17 14:59) ぐらい。

太陽黄経 (Ls) 87°, 太陽と地球との間の角度 30°.1, 地球までの距離 3.02 億 km, 太陽高度 3°.4〜46°.9

Twitter 翻訳

(Twitter / MarsPhoenix より。 火星現地時間はおおよそ)

Sol 22 00:42 (06/17 07:03 JST, 06/16 15:03 PDT)
溝をさらに深く掘ったら白いのがさらに見えてきたぞ。 落ちた小さなかけら付き。 http://is.gd/yMz 気になる。
Sol 22 00:43 (07:04 JST, 15:04 PDT)
最初に掘った場所 (別名、ドードー=ゴルディロックス, Dodo-Goldilocks) を観察し続けながら、 『不思議の国』(Wonderland) の新しいテスト場所を掘り始めることにするよ。 あとサンプルはまだ焼いてるとこ。
Sol 22 06:13 (12:43 JST, 20:43 PDT)
@WOnet 焼くのには 4~5 日かかるよ。 いまのところ、氷を探すために 95°F [35°C] (なし、予想通り)、 その後で 350°F [180°C] (微量の二酸化炭素を発見)、 そして今、 1800°F [1000°C] まで熱してるところ。
Sol 22 06:17 (12:47 JST, 20:47 PDT)
@benaud 白い模様は氷かもしれないし、塩かもしれない。 これから同じような層があるかどうか確かめるのに『不思議の国』を掘り始めるよ。 そしたら、それをテストする。

ロー・イメージより

(Sol 22 Raw Images より後日作成)

これまでとは対極の東側、ポリゴン中央部に当たる『不思議の国』(Wonderland) の掘削が行われた。 掘削された土壌はサンプルとはされずに溝の前後に捨てられているようだ。 あいにくこの溝の部分は太陽電池パネルの影になっており、 ロー・イメージ画像では掘削後の画像はどれも大きな影で分断されている。 こちらの溝の中には白い物質は認められないようだ。 画像はいくらか明るさが異なっているが、同時に撮影されたステレオ写真 (平行法用)。 (後に公開されたカラー画像では、画像処理でこの影がきれいに取り除かれている。 また、後に報告されたようにこの日の内に送りきれずに翌日まで保存しておくべきだった画像が、 システムの問題で保存に失敗している。 これら失われたものには、 白い層のある『ドードー=ゴルディロックス』(Dodo-Goldilocks) の経過観察の画像も含まれていたのではないかと思われる。)


#5703 (Sol 22 11:55)
左眼用

#5704 (Sol 21 11:55)
右眼用
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona

2008年6月17日火曜日

赤の女王?

一日のお休みをへて、今日の Twitter の情報によると、TEGA の最初の質量分析の結果では水分 H2O は検出されていないようだ。 今のところ、別の形での発表がなされているのか確認できてないので、 Twitter のひとつのエントリーに基づくだけの話。

実は、70 年代のバイキング計画にも今回の TEGA と同様の質量分析計が組み込まれていたのだけれど、 そのときには、土壌をはやく高温に加熱しすぎたという問題点が指摘されていたようだ。 そのためフェニックスでは 4〜5 日もかけてゆっくりと土壌を加熱して各温度で出てくる気体を別々に分析している。 Twitter によればこの加熱は 35°C, 180°C, そしておよそ 1000°C の 3 段階にわけられる。 最初の温度段階は、特に水分の分析を主眼としているようだ。 何度も揺すったりしてすったもんだのあげく、ようやく加熱器の中に入った最初の土壌サンプルの分析は、 現在のところ最後の段階の加熱が進んでいる。 そして暫定的な結果だろうが、35°C の加熱で水分は「予測通り」との言い添えつきで「なし」とのこと。

昨日のエントリーにも書いたけど、 顕微鏡の観察では TEGA のふるいの目の 1 mm よりもずっと小さな土壌粒子も、 何かによって塊を形成していることが見て取れる。 急にサラサラになってオーブンに入り込んだ粒子も、凝集していたものが完全に昇華したというのでなければ、 加熱器のサンプルの中に入っていてよさそうなんだけど、水分ではなかったということだろうか?(素人考え) 詳しいことは明日のブリーフィングかな? 顕微鏡と同じく「ふりかけ法」で投入されるサンプルの分析との比較も待たれるところ。

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昨日と一昨日の撮影では、 足元にあったすべすべの謎の物体『雪の女王』 (Snow Queen) のロボット・アーム・カメラ (RAC) による写真も撮られていた。 以下に sol 6 に撮られた写真と、sol 21 に撮られた写真とを並べてみた。 もしこれが氷の塊なら、2 週間以上も隔てれば少しは昇華して見かけが変わってきそうなものなのだけど、 素人目だと違いは見えないなあ。 『雪の女王』という名前は返上が必要になるのかも。


Sol 6 15:02:24

Sol 21 15:19:18
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona / Max Planck Institute

この画像を撮影したのはロボット・アームの先についたロボット・アーム・カメラ (RAC) で、 本来は掘削されたスコップの中の土壌や、掘削した溝を撮影することを第一の目的としている。 そのためだろうけど、カラー撮影のためにフィルターではなく 3 原色の LED による照明を用いている。 つまり、赤、緑、青それぞれの LED の照明で撮影された画像から照明なしで撮影された画像を引くことで、 差分として色の情報を得る (と思われる)。 よって、この方法は光の少ない対象に十分接近したときでないと効果がないと想像できる。 離れた明るい対象だと LED の効果が弱く、いわば昼間の風景をフラッシュ撮影するようなもので、色は再現できない。

デッキの下にあり、もう一つのカメラの SSI で見ることができない『雪の女王』や『ホーリー・カウ』のカラー写真は、いまのところ公開されていない。 実は raw image を見ていると、実際には RAC の RGB の照明を用いて『雪の女王』の撮影も何度か試みられている。 しかし、素人なりにそこから色を再現しようと何回か試してみても、ほとんどノイズ程度のものしかでてこない。

『雪の女王』 無理矢理疑似カラー

Raw image とはいっても、ウェブ上で提供されているのは非可逆圧縮された JPEG データだ。 この JPEG は 8×8 ピクセルを単位として DCT (離散コサイン変換) で高周波成分を切り取る圧縮を行っている。 8×8 ピクセル内で画像が波うったようになる JPEG のブロック・ノイズが出てくるのはこのためだ。 そして微弱な違いしかない画像の差分を取ればこのノイズが正味で拡大されて、 画像はアーティファクトだらけになってしまう。 オリジナルの画像ならもっとうまくいくのではないかと思うが、 今のところ画像が出てきてないことをみると、やはりあまりうまくいっていないのだろう。

JPEG は 8×8 を単位としているのだから、この大きさで平滑化というかモザイク化してやれば、 色の違いが多少とも取り出せるのではないかと無茶をやったのが右の非公式写真。 各色 8 ビットの深さだと、16 段階程度の明るさの違いしか出てこないがそれを無理矢理強調した。 どうだろう? 左側の『雪の女王』と右側の土壌の部分とあんまり明白な色の差はないように思えるけど。 『赤の女王』だったらルイス・キャロルだな。 (でも無茶やってるから、この色信じちゃだめだよ。)

追記 TEGA の暫定結果については 6 月 16 日の音声会見 (Phoenix Media Telecon, JPL サイト, MP3, 42MB) の中で触れられていた。 あと上の画像はちょっと入れ替え。

Sol 21 のフェニックス

Sol 21 は日本時間 2008/06/16 (月) 05:40 ~ 06/17 (火) 06:20 (米太平洋夏時間, PDT 06/15 13:40 ~ 06/16 14:20) ぐらい。

Twitter 翻訳

今日はフェニックス君の中の人、お休み。 ゆっくり休養してください。

ロー・イメージより

(Sol 21 Raw Images より後日作成)

周囲の撮影や溝の様子の観察とともに、 この日はロボット・アーム・カメラによるデッキ下の『雪の女王』(Snow Queen) の画像が届けられている。 発見後の sol 6 からおよそ 2 週間ぶりの撮影となる。


#5411 (Sol 21 15:19)

#5415 (Sol 21 15:24)
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona / Max Planck Institute

2008年6月16日月曜日

3 億キロと 3 ミクロン

Courtesy NASA / JPL-Caltech / Univ. of Arizona

着陸後 2 週ほどは土日も休みなくプレス・リリースが出続けていたが、 ここに来てようやく一休みのようだ。 Twitter のフェニックス君は毎日書き続けてくれているものの、 やっぱりペースは鈍りぎみかな。 おそらく次の会見では、TEGA の加熱中のオーブンからのガスについて、 質量分析計の最初の暫定的な結果が報告されることになると思われる。 何より水がどの程度含まれているか楽しみ。

日本時間で土曜の早朝に出たプレス・リリース (フェニックスが供給された土壌を調査、JPL サイト 6/13) には、 さっそく MECA の光学顕微鏡写真がいくつか公開されていた。 我らの惑星とは太陽系の始まり以来ほとんど別の道を歩んできた、 3 億 km 彼方の別の惑星からのはじめての µm オーダーの画像だ。 ここには、17 桁、 double 型でもちょっと困ってしまうめったにお目にかからないスケールの対比がある。

以下はキャプションなどをもとにした画像の素人解説。

1 枚目 (右上)。 Sol 17 に「振りかけ」られた土壌のサンプルの顕微鏡写真。 観察するサンプルをのせるための基板 (substrate) は粘着性のあるシリコーン樹脂でできているそうだ。 この基板は斜めに置かれた大きな車輪の端に並んでいて、上側でサンプルを受け取り、 回転して顕微鏡の前に持ってくる仕組みとなっている。

他の惑星のサンプルを探査機の分析にかけるということは、 バイキング以来およそ 30 年ぶりのことだそうで、 もちろん土壌の顕微鏡写真というのもこれまでで初めての記念すべきものだ。

スコップの中の土壌が凝集した塊 (clump) になっていることで話題にも問題にもなったが、 キャプションでは、この写真でも一回り小さなスケールでの塊が観察されていることに注意が促されている。 塊を構成している粒子そのものは顕微鏡の限界レベルの微細なものが大半だということだ。 図中の白線は 1 mm.

Courtesy NASA / JPL-Caltech / Univ. of Arizona

2 枚目。 この 2 つの画像は、大気中のチリ (左) と土壌 (右) との比較。 左のチリの方は着陸時に大気にさらされていた基板を sol 9 に撮影した既出の写真で、 右側は上と同じもの。

左の均一な感じのいくつかの比較的大きな粒は純粋な鉱物なんだろうが、 大半はぎりぎり見えるかどうかのすごく小さな粒子からなっている。 キャプションでは、右の土壌の写真でも、類似した微細な粒子からなっていて、 土壌がチリが集積したものから形成されていることを示しているとしている。 土壌の方において見られるそのチリの塊が何によって凝集しているのかということが焦点なのだろう。 白線はやはり 1 mm を表している。

Courtesy NASA / JPL-Caltech / Univ. of Arizona / Imp. Col. London

3 枚目。 より高解像度の原子間力顕微鏡 (AFM) にかけるために土壌粒子をしっかり固定する 様々な微小測定用基板 (micromachined substrate) の効果を試した写真のようだ。 基板がそれぞれ表面に違ったパターンをもっていて、 この中では左から 3 つ目の 5 µm 間隔の突起 (peg) を持つものが 最もよいというと結論づけられている。

この基板はロンドン大学インペリアル・カレッジ (Imperial College London) で製作されたもので、 今後使われることになる小型の原子間力顕微鏡の方はスイスのヌーシャテル大学 (Université de Neuchâtel) などによって製作されている。 この光学顕微鏡よりさらに 40 倍拡大できるというが、う〜ん、そんなものだろうか? どの図にもあるが、下側から伸びている不鮮明な影が原子間力顕微鏡の探針か何からしい。 5 本ほどあるそれぞれの帯状の基板の幅が 0.4 mm.

Courtesy NASA / JPL-Caltech / Univ. of Arizona

4 枚目。 3 段階の拡大写真。 画像上半分は、やはり一番上の写真と同じものだ。 下の左側は、そのうちのひとつの「塊」の拡大で、 上半分の緑っぽい部分はおそらくカンラン石 (olivine) だろうとしている。 火星のカンラン石の存在は軌道上やローバーの調査なんかからも調べられてて話題になってた気がする。 どういう意味合いの話だったかよく思い出せないけど。

問題の下半分の焦点を変えた画像が真ん中のもので、細かい粒子が凝集したものであることがよりはっきりしている。 右下の拡大図は、上の右側の白枠のもので、真ん中はこんなんとは違うでしょという話のようだ。 白線は 1 mm.

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さて、顕微鏡とは関係ないけれど、 sol 19 にはスコップがいままで 2 つあった掘削の溝の間を掘ったようで、 画像では 2 つがつながった感じになっている。 きちんと追いかけていなかったので、掘削された土壌が何に使われるのかはちょっと分からないが、 溝の方ではよりはっきりと白い部分が見えてきた。

短波長と長波長の 2 枚の左右の画像から昨日むりやり独自合成した立体写真を以下に。 3 枚の画像のうち左と右は同じもので、左のペアが平行法用、右のペアが交差法用。 もちろん疑似カラーだけど、公式には赤青メガネ用の立体画像しか発表されないようなので、 こういうのもあっていいかな。

溝の平行法・交差法兼用立体画像。擬似カラー

Sol 20 のフェニックス

Sol 20 は日本時間 2008/06/15 (日) 05:01 ~ 06/16 (月) 05:40 (米太平洋夏時間, PDT 06/14 13:01 ~ 06/15 13:40) ぐらい。

Twitter 翻訳

(Twitter / MarsPhoenix より。 火星現地時間はおおよそ)

Sol 20 00:53 (06/15 05:55 JST, 06/14 13:55 PDT)
@bogiebogie 通信は毎日数回、火星の軌道船オデッセイ [wikipedia] と MRO (マーズ・リコネサンス・オービター) [wikipedia] を通してやるよ。 彼らがぼくのデータを全部、地球からと、地球へと中継してくれる。
Sol 20 19:31 (06/16 01:04 JST, 09:04 PDT)
@ladyozma 科学チームの勤務シフトは 8.5 時間ぐらい。 エンジニア・チームは毎日新しいコマンドを書いてアップリンクするから、 10 時間ぐらい働いてる。
Sol 20 19:45 (01:18 JST, 09:18 PDT)
@Mikoden 3 機の軌道船 (オデッセイと MRO とヨーロッパのマーズ・エクスプレス) は、 着陸地点の上を通るように軌道を変えてくれた。 MRO がこの写真を撮ったんだ。http://is.gd/xQ7

ロー・イメージより

(Sol 20 Raw Images より後日作成)

左: ロボット・アームの「ひじ」の画像。 遠景を撮るつもりで偶然写り込んでしまった気もするが、本格稼働後はっきり撮影されたのははじめてかも。 右: 掘削された溝は sol 19 の 14 時台の画像と比べると下部の形だけ若干変化している。 Sol 19 にあった白いかけらは分裂して左下の影になっている部分に移動しているのがよく見るとわかる (あるいはこれらの塊はそれとは別のかけらかもしれない)。


#5272 (Sol 20 14:32)

#5382 (Sol 20 16:01)
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona

2008年6月15日日曜日

中の人

氷らしき物質の発見やサンプル供給の様子など、新聞より 2 日もはやく最新の情報を伝えてくれ、また RAD6000 コンピューターやら RS-422 プロトコルやらマニアックな質問にも Twitter を使って答えてくれるフェニックス君。 2 万人というフォロワーの数はもはや Twitter の創設者自身の 2 倍近いという。 この探査機が身近な感じがしてしまうのには、こうした一人称の生の情報がかかせない。

ちょっと古いけど “WIRED” (5/30) はフェニックス君に単独インタビューを行っている。 ただし 140 文字制限で。

Wired.com: @MarsPhoenix やあ! ぼくらと話してくれるって、ありがとう。 日曜に着陸したんだよね。 どんな感じだったか教えてくれるかな?
Phoenix Mars Lander: @alexismadrigal こんにちは! こちらこそうれしいよ。 着陸は本当にすばらしかった。 パラシュートが開く前、自由落下の数秒間に風を感じるのが大好き。ワーィ!

Wired.com: ローバーのスピリットとオポチュニティー、それから火星の軌道船の中で、 砂漠の惑星に一緒に捕らわれてしまうんだとしたらどれがいいかな?
Phoenix: スピリットかオピーだな。 彼らはサバイバーだよ! スピリットは働き者だし、オピーは楽しみ方を知ってる。それに、彼らは悪漢とも渡り合ってきたしね。

Wired.com: いまじゃ、君の一挙手一投足を見つめて歓声を上げているほぼ 1 万人のフォロワーが Twitter にいるわけだけど、そこからどうやってインターネットにアクセスしてるの?
Phoenix: 接続状態はすばらしいけど、Twitter するのは深夜だけにしているよ。 こんなにたくさんのフォロワーが付くなんて想像してなかった! 仲間とぼくのほんとの名誉だよ。

Wired.com: 人間のファンからこれまでにもらった最高のトゥイート [さえずり、Twitter への投稿] は何かな?
Phoenix: 着陸の前にひとりが「ベイビー、新しい下着に着替えとけよ!」って :-D 何百人もが最高の思いを送ってくれて、それに質問も山ほど! 答えるのはすごく楽しい。

Wired.com: 火星の冬はとても寒いって聞いているけど、毛布はたくさん持って行ったの?
Phoenix: 寒いかって? 凍りついちゃうよ! 夜には最低 −122°F [−86°C]! ブルブルブル! でも寒さをしのぐために電気ヒーターや温度センサー、断熱コートを持ってるよ。

Wired.com: 最後だけど、Twitter での議論のひとつに決着を付けたいと思ってるんだ。 君はいったい男性なのかな女性なのかな?
Phoenix: いい質問だね! 考えたことなかったや。 ぼくのロボット・アーム・カメラでデッキの下をのぞいた写真を送るから、 それについては後で連絡するよ… :-)

でも、そんなフェニックス君に「中の人」がいたなんてー、うぇぇぇーん。 無粋にも上の “WIRED” と 5/31 の『ニューヨーク・タイムズ』は、フェニックス君の中の人と性別とをばらしちゃってる。^_^ 一応以下はネタバレ注意かな?

中の人は JPL のニュース・サービスの偉い人でヴェロニカ・マクレガー (Veronica McGregor) さんという方らしい。 質問は科学チームに転送され、答えを自宅で書き込んでいるそう。

マクレガーさんは言う。「驚きました。何人ぐらいの人が Twitter を使っているのかまったく知らなかったんです。」

インタビューに対して、一人称でメッセージを書くことの理由について答えている。

トゥイートは、まるで気さくな探査機のフェニックスが友達やファンに携帯メールを送っているかのように一人称で書かれている。 一部には、それがもっと楽しいものにするためであったとマクレガーさんは言うが、もっと大きな理由は、Twitter によって課されたメッセージあたり 140 文字という厳しい制限にあったという。 この制限は、トゥイートをあたかも俳句のような文学形式に変えてしまう。

マクレガーさんは言う。 「もし私が『探査機は』(the spacecraft is) と書かなければならないとしたら文字数を使い過ぎます。」 『ぼくは』(I am) の方がずっと短い。
「それならたくさんの情報をそれぞれのエントリーに入れられます。」

Sol 19 のフェニックス

Sol 19 は日本時間 2008/06/14 (土) 04:21 ~ 06/15 (日) 05:01 (米太平洋夏時間, PDT 06/13 12:21 ~ 06/14 13:01) ぐらい。

Twitter 翻訳

(Twitter / MarsPhoenix より。 火星現地時間はおおよそ)

Sol 19 01:31 (06/14 05:54 JST, 06/13 13:54 PDT)
ご冥福を、ティム・ラサート*。 http://www.msnbc.msn.com/id...
[* Tim Russert, NBC キャスター。]
Sol 19 19:55 (06/15 00:49 JST, 06/14 08:49 PDT)
@jampe 着陸してから、地球の仲間たちの勤務シフトの開始時間は、 火星の時間に合わせるために毎日半時間シフトしてる。 今のシフトは午前 4 時前にスタート。

ロー・イメージより

(Sol 19 Raw Images より後日作成)

2 つの掘削地点『ドードー鳥』(Dodo) と『ゴルディロックス』(Goldilocks) の間が掘削され、 全体が幅広い 1 つの溝となる。 白い層がより露出するとともに、その大きなかけらと思われるものが溝の左中央にころがっているのが認められる。 SSI の画像は CCD に合わせて正方形のものだったが、この日から SSI で横長や縦長の画像も撮れるようになったようだ。 左は掘削前の横長の画像、右が掘削後の縦長の画像。 左の画像の左の土山は掘削した土壌を捨てたところ。


#5016 (Sol 19 10:11)

#5128 (Sol 19 14:39)
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona

Sol 12 から Sol 18 までのまとめ

できごと

Sol 018 日本時間 2008/06/13 (金) 03:41 ~ 06/14 (土) 04:21 ぐらい。
2 つの掘削溝に認められる白い層を確認するため、これらの溝がさらに掘り進められる。 白い物質の正体については氷か塩か確定できていない。 この火星日の終わりには大きな会見があり、最初の分析結果となる光学顕微鏡写真を含むこれまでの画像やビデオが多数公開されている [参照 ビデオがたくさん]。 顕微鏡写真では、土壌がチリと同じ極めて小さなサイズの粒子からなっているように見えるものの、それが何かによって一回り大きなサイズの塊に凝集していることが報告される [参照 3 億キロと 3 ミクロン]
Sol 017 日本時間 2008/06/12 (木) 03:02 ~ 06/13 (金) 03:41 ぐらい。
振りかけ法が成功したことにより、この方法を用いた MECA の OM への初めてのサンプル供給が行われ、無事完了する。
Sol 016 日本時間 2008/06/11 (水) 02:22 ~ 06/12 (木) 03:02 ぐらい。
この火星日の終了間際のブリーフィングで TEGA への土壌サンプルの投入が成功したことが発表される。 前日までの計 7 回に渡る振動ではわずがな粒子しか落ちてこなかったが、この日の振動ではわずか 10 秒間でオーブンが一杯になっていた [参照 いったい、火星の土って!?]。 TEGA のオーブンの加熱はゆっくり進められ 4〜5 日を要する。
Sol 015 日本時間 2008/06/10 (火) 01:43 ~ 06/11 (水) 02:22 ぐらい。
前日に掘削した土壌を使って振りかけ法のテストが行われる。 MECA の容器の平らな部分を用いて行われたこのテストの結果は上々なもので、細かい粒子がスコップから落ちる様子が観察された [参照 フェニックスはフリカケをおぼえた!]
Sol 014 日本時間 2008/06/09 (月) 01:03 ~ 06/10 (火) 01:43 ぐらい。
TEGA の長時間のふるいの振動が行われる。 ふるいの振動の成果は思わしくなく、数粒の通過が認められるだけとなる。 今後のサンプル供給に向けて、土壌をそのまま落とすのではなく、スコップについた掘削用の電動ヤスリのモーターで振動させて粒子を振るい落とす「振りかけ法」(sprinkling method) が検討される [参照 「ふりかけ」はフェニックスを救うか]。 一方で MECA (Microscopy, Electrochemistry, and Conductivity Analyzer, wikipedia) の光学顕微鏡 (Optical Microscope, OM) での検査に向けて『ちっちゃなくま』(Baby Bear) の掘削地点が掘り進められ、スコップ内に 2 番目のサンプルが確保される。 この時点で 2 つの溝にはどちらも白い物質がはっきりと認められる。
Sol 013 日本時間 2008/06/08 (日) 00:23 ~ 06/09 (月) 01:03 ぐらい。
地球上で TEGA への土壌投入の問題への対処法の検討が続けられる [参照 ふるいつまっちゃった]。 一方、テスト掘削地点『ドードー鳥』(Dodo) では更なる掘削が行われる。
Sol 012 日本時間 2008/06/06 (金) 23:44 ~ 06/08 (日) 00:23 ぐらい。
Sol 11 に採掘されていた土壌が TEGA (Thermal and Evolved-gas Analyzer, wikipedia) の第 4 オーブン (加熱器) のふるいの上へ落とされる。 土壌は予定通りふるいの上に落ちたが、1 mm のふるいの目を通してオーブンにまでは達していないことが明らかとなる。 それまでも、地表の画像やスコップの画像、デッキのチリの積もりぐあいなどから、土壌粒子が凝集していることが話題となっていた。

ロー・イメージ

プレス・リリース

(2008/06/07 〜 06/13, 日付は米太平洋夏時間, PDT, に基づく)