2008年7月12日土曜日

Sol 46 のフェニックス

Sol 46 は日本時間 2008/07/11 (金) 22:10 ~ 07/12 (土) 22:49 (米太平洋夏時間, PDT 07/11 06:10 ~ 07/12 06:49) ぐらい。

太陽黄経 (Ls) 98°, 太陽と地球との間の角度 26°.4, 地球までの距離 3.26 億 km, 太陽高度 3°.2〜46°.7

Twitter 翻訳

(Twitter / MarsPhoenix より。 火星現地時間はおおよそ)

Sol 46 15:06 (07/12 13:41 JST, 07/11 21:41 PDT)
@gatewayy すべて絶好調だよ! はじめて原子間力顕微鏡 (Atomic Force Microscope) を使ったし、 うまくいけば来週になる氷に穴を開ける準備もできてる。
Sol 46 15:29 (14:04 JST, 22:04 PDT)
@purelithium CO2 の氷でやられちゃうまで、どのくらい持ちこたえられるかわからないな。 9 月かな? 10 月かも? その時が来ればわかるさ。 それまでにやることがいっぱい。
Sol 46 15:32 (14:07 JST, 22:07 PDT)
もしぼくが生きてたとしても、 地球と火星が太陽をはさんで反対側になる合 (ごう, Solar Conjunction) のせいで 11 月には地球との交信ができなくなっちゃうんだ。
Sol 46 15:41 (14:17 JST, 22:17 PDT)
@douglasbass 合は火星での全部のミッションに影響するよ。 この前、2006 年に起きたときどんな風に対処されたかはここ。 http://is.gd/RF1
Sol 46 15:57 (14:33 JST, 22:33 PDT)
今はまだ落ち込んでられないよ! これからサンプルをたくさん集めて調べなきゃ。 科学的分析は (地球に送られて) 何ヶ月も続くよ。 たとえぼくがいなくなった後でもね。
Sol 46 16:15 (14:52 JST, 22:52 PDT)
@sleh うん、こっから木星が見えるよ! 土星も見えるところにあるから (地球からもね)、 ぼくの友達の @CassiniSaturn [カッシーニ, wikipedia] (Twitter の新入り) に手を振れる。
Sol 46 16:58 (15:36 JST, 23:36 PDT)
@scifirantergirl いずれ凍っちゃうってのはわかってたこと。 氷を手に入れて調べるためにはこうするしかなかった。 そして手を触れたのはぼくが初めて! 後悔はしてないよ。

メロドラマにしすぎだよ! たかがロボットだぞ! あれ、なんだろう? 目から熱いものが…。

ロー・イメージより

(Sol 46 Raw Images より後日作成)

TECP (熱・電気伝導度探針) による地表の土壌での伝導度の測定が行われたようだ。 上段は、ロボット・アームの手首についた TECP を地表に挿入する様子をロボット・アーム・カメラが撮影した画像。 また夜間撮影も行われている。 下段左は挿入されたままとなっている TECP を 23 時台に撮影した画像で、 右はほぼ同じ時刻に SSI カメラが北の空の太陽を写した画像。 太陽に縦に入った筋は CCD によるアーティファクト。


#12217* (Sol 46 12:05)

#12218* (Sol 46 12:09)

#12457* (Sol 46 23:15)
照明なし

#12469 (Sol 46 23:14)
方位角 355°.4
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona / Max Planck Institute*

2008年7月11日金曜日

Sol 45 のフェニックス

Sol 45 は日本時間 2008/07/10 (木) 21:30 ~ 07/11 (金) 22:10 (米太平洋夏時間, PDT 07/10 05:30 ~ 07/11 06:10) ぐらい。

太陽黄経 (Ls) 97°, 太陽と地球との間の角度 26°.6, 地球までの距離 3.25 億 km, 太陽高度 3°.2〜46°.8

Twitter 翻訳

(Twitter / MarsPhoenix より。 火星現地時間はおおよそ)

Sol 45 14:28 (07/11 12:22 JST, 07/10 20:22 PDT)
「フォークを刺す」ってのの新しいやり方。 今度は、火星の土を調べるのに 4 つの棘がある伝導度プローブを使ったよ。 http://is.gd/QLN を見てね。

ロー・イメージより

(Sol 45 Raw Images より後日作成)

硬いブレードを使って何度も擦っている『白雪姫』の底は、 擦ったと思われるあとの暗いシミはかなり大きくなってるけど、 サンプル採取までにはなかなかいたらないよう。 影の状態とか明るさとかが少し違っているけどそのまま並べたステレオ画像。


#12150 (Sol 45 15:55)
左眼用

#12159 (Sol 45 16:03)
右眼用
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona

2008年7月10日木曜日

スケールの耐えがたい重さ

ドット欠けじゃない

1600×1200 ドットの大きなモニタを 30 台ばかり買ってきて、 広い部屋に 横一列にずらりと並べてみたと想像する。 画面と部屋を真っ暗にして、ただ左端のモニタに 1 ピクセルの小さな赤い点を打ち、 右端のモニタに 2×2 ピクセルの青い点を打ってみる。 青い点からどこか 1.5 cm ぐらいのところに 0.5 ピクセルのくすんだ点も想像してもいい。 左が火星で、右が地球 (そのわきは月)。 その間の空間にめぼしいものは他に何もない。 今現在、「すぐ隣の惑星」という 6 文字の言葉に対応しているスケールは実際にはこれだけのものだ。

2 つの点をじっとながめていれば、 点が数分ごとに 1 ピクセルずつ (実際には秒速何十 km という猛烈な速度で) 移動しているのがわかるだろう。 点はそれぞれの慣性に従って一直線にそれぞれの道を歩もうとする。 ところが天井よりはるか上、モニタを十数台ばかり積み上げたところに、 直径 5〜6 cm はあろうかという巨大で熱い水素ガスのかたまりがある。 その輝きは最大の輝度でモニタを光らせたところでまったく足りない。 それが及ぼす重力という謎の力のせいで 2 つの点の筋道はねじれ、 それぞれ 1 年と 1.9 年という時間をかけて元のところに戻ってくる。 軌道が曲がっていくことはボールで遊ぶ子供ならみんな知っているが、 なぜそうなるのかは究極的にはどんな物理学者も知らない。 どのくらい曲がるだろうか予測はできる。 そんなことにおかまいなく、 ほとんど重力のみが支配するこの間隙の中で 2 つの点はこの単純な営みを数十億年続けている。

私たちの日常の知識やニュースほぼすべては右の青い点に関わっていて、 フィードの長いリストのように消費されていく。 時折、赤い点やその他のところのニュースがその一行をかざる。 こうした知識や言葉はいろんな意味でのスケールを歪めるのが仕事のようなもので、 それによって私たちは現実を理解したと思い込める。 私たちは「水金地火木…」という呪文を唱え、 「ああ、あの火星のことだね」と勘違いして日常を続けられる。 ありがたいことだ。 しかし、このすぐ隣の惑星でさえ、その現実を言葉で表したつもりにはなれても、 本当の意味で肌で感じるのは叶わぬことなのかもしれない。 モニタを並べて想像力を駆使してみても、 あるいは物理学者や天文学者であったとしても、それは同じことだろう。 それでも、このあまりにも重たいスケールの対比について、 こうして時折想像してみるのは悪くない。

地球は火星よりいくらかこの強大な太陽のそばにあり、重力の漏斗の「低い」位置にいて、 かつ、強く太陽の方へねじ曲がろうとする。 円を描いて回り続けたいのなら、より速く走らなければならない。 幸いそれにちょうど打ち勝つだけ地球の方が速い。 こうして 2 つの星の位置関係はずれていく。 100 万分の 1 ピクセルほどの大きさのフェニックスやその仲間の探査機は 2 年 2 ヶ月ごとに訪れるこのずれの絶妙な時期を捉え、 小さな街を一晩まかなえる程の膨大だが重力の力に対抗するにはギリギリのエネルギーを消費して、 地球から火星に「登る」ことができた。

* * *

長い前置きだったが、これは右のありふれた図を見てもらう前に付け加えたいことだった。 この図は、今年の火星と地球の位置関係を遠くから太陽系をながめたものとして表したもの。 フェニックスの地表ミッションの火星日に従って、 sol 0 から sol 180 まで 45 sol ごとに位置をプロットしている。 スケールを想像するために実際の大きさに言及しておけば、 元画像では太陽–地球間の 1.5 億 km の距離が 128 ピクセルで表されているので、 太陽はおよそ 1 ピクセル、地球は 1/100 ピクセルほど、火星はそのさらに半分、月は地球の 1/3 ピクセル隣にある。

図の向きは、火星の自転軸の向きを基準にしてあって、赤い火星の軌道の真下が火星の北半球の夏至となる。 Ls として示された角度は火星の軌道にそった火星の位置、 もしくは火星から見た太陽の位置 (火心太陽黄経) を表すもので、 火星の季節を示す指標として日付がわりによく使われる。 地球の軌道上の位置もほぼ日付に対応するが、北半球の夏は右の方で冬は左の方だ。 習慣的に北から表したこの図では、どちらの惑星も反時計回りに回る。 地球の軌道は見た目太陽を中心とする円とほとんど区別がつかないが、火星の方ははっきりと歪んでいる。 なぜかは知らない。 ともかく火星の北半球の夏 (南半球の冬) は太陽から遠く、南半球の夏 (北半球の冬) は太陽に近い。 見かけの太陽は後者の方が 5 割近くも明るくなる。 おかげで南半球の夏冬は厳しく、北半球はそれより穏やかだ。

フェニックスの着陸した北極圏は今は夏で、おそらく水蒸気を大気に供給し続けている。 しかしやがて北半球が秋分、南半球が春分を過ぎて南極冠が暖かくなり始めると、 南極冠は激しい勢いで二酸化炭素を吐き出し始める。 逆に北極は −120°C を下回り、大気自体が凍りだし気圧は下がりドライアイスが積もりだす。 これはときに火星全体を覆う砂嵐を発生させ、激烈な冬の訪れを告げる。 左の図の 2 つの画像は、2001 年に発生したとりわけ大規模な砂嵐をハッブル望遠鏡が撮影したもので、 左は砂嵐の発生しかけの頃 (Ls 185° ぐらい)、右は全体が覆われたとき (Ls 227° ぐらい)。 黄色く霞がかったチリに覆われ地表の模様が見えなくなっている (両者の画像はほぼ同じ向き)。 規模は年によって違うようだが、大規模な嵐が発生すれば数日で火星全体を覆うんだそうだ。

今は太陽は昼に 47° まで登るほど高く、フェニックスにエネルギーを供給し続けている。 夜でもわずかに地平線上に留まる白夜だ。 エネルギーは十分で、探査機は夜間に気象観測を行えるほどのようだ。 しかし、当初のミッションの予定である 90 sol が終わる頃、 つまり 8 月の末には白夜が終わり、その後太陽の高度は急速に下がっていく。 それでも今の調子なら、探査機は観測を続けていくだろう。

終わりはいつ訪れるのだろうか。 図右上あたりの Ls 240° ともなれば逆に一日中太陽を拝むことはなくなり、 こうなれば探査機は活動のしようがなく、厚いドライアイスに覆われていくままとなる。 しかしその前に、sol 180 を少し過ぎたあたり、 12 月 6 日には地球と火星が太陽を挟んでほぼ反対側となる。 これは「合」 (ごう) と呼ばれる。 おそらくこの前後数週間は互いから見て太陽が近すぎるため火星との通信が行えなくなる。 このころ太陽の高度は真南でも 26° ぐらい、太陽電池に注ぐ日差しは現在の 6 割だ。 一日を通しての積算は、概算すると 1/3 程度になりそう。 このあたりの見通しについて述べられたものは目にしていないのでまったくの想像だが、 このあたりがフェニックスとのお別れとなるかもしれない。 合の後も通信が再開すれば、砂嵐に遭遇できるかもしれないが。 フェニックスのミッションがちょうど半分となった時に、終わりの話など縁起でもないな。

* * *

アリゾナ大学のウェブ・サーバからロー・イメージをスクリプトで取ってきたりしているのだけど、 昨日は何度も中断していた。 サーバまた侵入されたりしてないだろうか。 取ってきた画像も、誰か処理プログラムに余計なことをしたのか EXIF のデータが乱れていたりする。 そんな具合で、情報が少ないのだけど、 Sol 42 に行われたと思われるブレードを使ったフェニックスの氷の掻き出しテストは、 この方法ではやっぱりあんまりうまくいっていなかったみたいだ。 スコップの裏の電動ヤスリの登場となったはずだけど、画像の情報からはどうなってるかまだはっきりしない。 TECP の接触テストは順調に終わったよう。 数日前にパノラマの欠けた部分の撮影もすべて終わったようで、 全体のカラーパノラマがおそらく週末にでも公開されるかもしれない。 ロー・データから独自に合成を頑張っちゃってる人もいるので、こっちが先になったりして。

そして、アリゾナは高校生で賑わっているよう。

Sol 44 のフェニックス

Sol 44 は日本時間 2008/07/09 (水) 20:51 ~ 07/10 (木) 21:30 (米太平洋夏時間, PDT 07/09 04:51 ~ 07/10 05:30) ぐらい。

太陽黄経 (Ls) 97°, 太陽と地球との間の角度 26°.7, 地球までの距離 3.24 億 km, 太陽高度 3°.2〜46°.8

Twitter 翻訳

(Twitter / MarsPhoenix より。 火星現地時間はおおよそ)

Sol 44 15:07 (07/10 12:23 JST, 07/09 20:23 PDT)
@spacecadets 土の分析には 1 日で済んじゃうもの (顕微鏡での土壌粒子の大きさの見積り) も、 何週間かかかちゃうもの (サンプルの気体や成分や有機物を同定) もあるよ。

ロー・イメージより

(Sol 44 Raw Images より後日作成)

デッキの下の『雪の女王』と『ホーリー・カウ』のロボット・アーム・カメラによる撮影が行われている。 上段の『ホーリー・カウ』に関しては sol 31 から 13 sol ぶりだが、 sol 8 と sol 31 の間で見られた脚の斑点には顕著な変化はないようだ (画像は例によって上下逆)。 下段の『雪の女王』の方は、前回の最撮影が sol 21 で 23 sol ぶりとなる。 Sol 21 とほぼ同じ位置からの撮影で、懲りずにカラーの照明を当てての撮影も行われている。 『雪の女王』の表面に乗っていた小さな石の位置が変化していたりなど、 若干の違いがあるが、単に風のせいかもしれない。


#11899 (Sol 44 14:57)

#11900 (Sol 44 15:00)

#11908 (Sol 44 15:03)

#11913 (Sol 44 15:08)
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona / Max Planck Institute

2008年7月9日水曜日

Sol 43 のフェニックス

Sol 43 は日本時間 2008/07/08 (火) 20:11 ~ 07/09 (水) 20:51 (米太平洋夏時間, PDT 07/08 04:11 ~ 07/09 04:51) ぐらい。

太陽黄経 (Ls) 96°, 太陽と地球との間の角度 26°.9, 地球までの距離 3.23 億 km, 太陽高度 3°.3〜46°.8

Twitter 翻訳

(Twitter / MarsPhoenix より。 火星現地時間はおおよそ)

Sol 43 10:46 (07/09 07:15 JST, 07/08 15:15 PDT)
まるでこれは黒板を爪で引っ掻いてるみたいだな。 ぼくはいま、氷のかき取りとスコップへのサンプルの集め方の練習中。 http://is.gd/lFa
Sol 43 10:59 (07:28 JST, 15:28 PDT)
地球にいるぼくの双子の兄弟も一緒に練習してるから、 どのやり方が一番うまくいくかエンジニアにわかるんだ。 どうやらこれは、氷に穴を開ける「ヤスリ」の出番みたい。
Sol 43 12:18 (08:49 JST, 16:49 PDT)
@ZorkFox それどころか、ローバーたち [wikipedia] には、 2 人 JPL のテストベッドに地球の双子の兄弟がいるよ (1 人に 1 人)。 スピリットとオピーがデリケートな動きをやんなくちゃならないとき、その前に彼らがそれを練習するんだ。
Sol 43 12:24 (08:55 JST, 16:55 PDT)
@ChrisRomp 昔 2002 年にマーズ・オデッセイ [wikipedia] がこのあたりの地面の下の氷を検出してたんだよ。 だから目標はそれを見つけて、掘り返して、分析することなんだ。

ロー・イメージより

(Sol 43 Raw Images より後日作成)

TECP (熱・電気伝導度探針) の接触テストが再び行われ、今回は土壌にまで探針が挿入されている (上段)。 (7 月 10 日に animated gif に加工されて公開された公式画像キャプション)。 中段は土壌に開いた穴の平行法ステレオ画像。 穴は中央わずかに下にある。 また前日の遅くかこの日早くに『白雪姫』のさらなるかき取りが行われたようだ。 朝 6 時台の画像には sol 42 の午後 5 時前の画像からの変化が見られる (下段)。 なお、この日の画像には、EXIF の撮影データが乱れているものがあるようだ。


#11215* (Sol 43 11:32)

#11552 (Sol 43 13:11)
左眼用

#11553 (Sol 42 13:12)
右眼用

#11249 (Sol 42 06:28)
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona / Max Planck Institute*

2008年7月8日火曜日

休暇明けはメール・ボックスが怖い

休暇明け・週明けの状況をまとめられるだけまとめ。 まず 5 日ぶりの短めプレス・リリース。

2008 年 7 月 7 日 — NASA のフェニックス・マーズ・ランダーは、 探査機の湿式化学実験装置 (wet chemistry laboratory) [WCL] での分析の 2 回目となる土壌サンプルをロボット・アームにて供給し、 フェニックスから日曜日の夜 [7 月 6 日, sol 41] に受け取ったデータを確認した。

このサンプルの実験の結果は、今後、 2 週間前に湿式化学実験装置によって分析された最初の火星の土壌の結果と比較されることになる。

この実験装置は、 フェニックスの顕微鏡・電気化学・電導度分析装置 (Microscopy, Electrochemistry and Conductivity Analyzer) [MECA] の一部である。

今日 [sol 42] の探査機の主な活動は、 氷のような物質 (icy material) のサンプルを削り取り、 ロボット・アーム先端のスコップに採取するための方法を試験することである。

この作業が行われる前、その最中、および作業後の写真によってこの方法の評価が可能となるだろう。

試験がうまくいけば、科学チームは、 フェニックスの焼いてから嗅ぐ (bake-and-sniff) 装置、 熱・発生気体分析装置 (Thermal and Evolved-Gas Analyzer) [TEGA] に供給するための次のサンプルを集めるのにこの方法を用いる予定である。

氷のサンプルということからてっきりサンプルは、 白い層の明確な『ドードー=ゴルディロックス』(Dodo-Goldilocks) の溝から取られるものと思っていたが、 どうやら違ったようだ。 Sol 42 のロー・イメージを見る限り、 sol 41 に WCL に供給されたサンプル『魔女』(Sorceress) とほとんど同じ『白雪姫 5』(Snow White 5) の溝の底の位置に引っ掻いた痕跡がある。 ただ、掘削後のスコップの画像にはほとんど土壌がみえないみたい。 うむ。 掻き集めた山の採取がうまくいかなかったか、次の日の予定なのかはよくわからない。 TEGA 自体の方には動きはなさそうなので、実際のサンプル調査はもう暫く後かな。 というか昨日・今日になって sol 37 (7 月 2 日) の古い画像がどどどと流れてきたりしてて、まだごたごた感が残ってる。 まだ休暇中の分の処理中なのかもね。 たまったメール読んでたりとか。

次いで、テキサス A&M 大学の SSI ページ

Credit for the original image: MECA Team / JPL-Caltech
Image credit: University of Basel, Institute of Physics

を見ると、これに付してある “ActID” の短い説明では、この他に “TECP” による測定の準備も進んでいるのがわかる。 TECP は Thermal and Electrical Conductivity Probe つまり熱・電気伝導度を測るためのプローブ (探針)。 ロボット・アームの手首部分にひっついていて、 ロボット・アーム・カメラが撮影したときに画面に必ず写っている箱のようなものがこれだ。 カメラの死角となっている側に何本かのプローブがあって、土壌に突き刺して、 熱伝導度と電気伝導度、温度なんかを測るようだ。 ていうかまだ使ってなかったんだ。

Sol 36 の画像には TECP をここに突き刺します的な場所の画像が載っており、 確認するとここは『ドードー=ゴルディロックス』と『白雪姫』の真ん中あたりみたい。 さらに sol 41 には謎の 8×8 ピクセル極小画像が同じ TECP の調査の名前で載っている。 これはどう見ればいいのかわからない。 うむむ。

この TECP は “Decagon Device” という食品の水分活性 (活性水じゃないよ :-) を測定する装置なんかを作ってる会社が作ったみたいで、誇らしげなページは以下に。

このプローブで風力なんかも測れるとしてあるけど、うむむむ、どうやって?

さらに sol 42 には “AFM checkout part 1” なんて文字も見える。 こっちは、原子間力顕微鏡 (atomic force microscope) のチェックだろう。 これは MECA の光学顕微鏡の脇についていて、スイス製。 文献には日本人の研究者の名前もちらりと見える。 読んでないけど。

たぶん 10 nm オーダーぐらいの解像度でサンプル見えちゃったりするんじゃないかな。 読んでないから勘だけど。 というか、やたらに装置小さい。

もう数日で早くも規定の地表ミッション 90 sol の半分が終わることになる。 TECP と AFM が使われれば、フェニックス君の観測装置は一応全部使ったことになるのかな。

Sol 42 のフェニックス

Sol 42 は日本時間 2008/07/07 (月) 19:31 ~ 07/08 (火) 20:11 (米太平洋夏時間, PDT 07/07 03:31 ~ 07/08 04:11) ぐらい。

太陽黄経 (Ls) 96°, 太陽と地球との間の角度 27°.1, 地球までの距離 3.22 億 km, 太陽高度 3°.3〜46°.8

Twitter お休み。 うん、空エントリを準備してたよ。

ロー・イメージより

(Sol 42 Raw Images より後日作成)

休暇明け。 『白雪姫』のそこを炭化タングステン製のブレードでかき取って、 スコップ内に氷と思われる層の物質が得られるかテストが行われた。 影があってこれまた分かりにくいものの、SSI による最初の 4 枚の画像では、 底の左側にこそげてから手前の山をすくったあとが認められる。 しかしスコップ内にはごく僅かの土壌しか入っていないようだ (最下段)。


#10720 (Sol 42 09:58)

#10663 (Sol 42 11:57)

#10652 (Sol 42 12:39)

#10887 (Sol 42 16:50)

#10712* (Sol 42 13:25)
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona / Max Planck Institute*

2008年7月7日月曜日

火星の北極星

いよいよ今週は氷のサンプルの採取。 TEGA のふたを開けたり氷を削ったりと準備に数日かかるかもしれないが、 採取後は氷が昇華しちゃう前に今度は大急ぎで運ばれるはず。 TEGA が使えるのはこれで最後になっちゃうかもしれない。 ただまだ週が明けたばかりで情報はほとんどないので、七夕にちなんで星空の話でもしてみる。 ただしちょっと火星版で。

火星は 6 月 25 日の夏至を過ぎたところで、 これは地球の夏至と 4 日違いだった。 これはまあ偶然。 季節を決めるのは自転軸の傾きだけど、 火星の自転軸の公転面の軸に対する傾きは 25° ほどで、地球 (23° ほど) とも近い。 ただその自転軸の向きはぜんぜん違う。 地球では自転軸を北に伸ばすとたまたまそばに北極星があって、 だからあの北極星が私たちの北極星となっている。 火星ではまた北の空を回る星々は星空の別の位置となる。 それはどこか?

もうずいぶん前になるけど、望遠鏡でのぞいたときに火星のどこが見えているか知りたくて、 この火星の自転軸の向きをさんざ調べたことがある。 今なら手近な天文ソフトがそんなこと知ってても知らずとも、 勝手に計算して火星の模様を CG で表示してくれるかもしれないが、 そのころは自分で計算するしかなかった。 ともかく、調べてみると、 自転軸が「どれだけ」傾いているかならば大概の資料には載っているのに、 当時のネットや本屋で手に入るような一般向けの資料には、 肝心の自転軸が「どっちに」傾いているかまではなかなか載っておらず、 結局、「国立天文台」にまで電話することになった。 国立天文台には一般からの質問を受け付ける専門の部署があって、 偉い先生が「いえ、それは UFO じゃなくて宵の明星、金星です」 なんて応対を迫られてたりする、みたい。

そんな中、 私も「あの、火星の自転軸の向きが知りたいのですが…」 と電話をかけたわけだ。 なかなか最初は話が通じなくて、さんざん知っている数字の答えが返ってきた。 「火星の自転軸の傾きね、 火星の公転に対しては 25° とこれこれですよ…」 「あ、えっと、そーではなくて、その 25° ってのがどっちの 25° なのかってのが…。」 こっちは適切な専門用語を知らずにこんな調子で聞いているものだから、相手も大変だ。 言いたいことを伝えるのに何度かのやり取りが必要だったけど、 ようやくややこしい質問が来たと悟ったらしく、 結局わざわざ半時間も調べていただいたあげくに、求める答えを手にすることができた。

そのときの答えそのものは今はわからなくなってしまったが、 変形した上で自分のプログラムに組み込んだところから抜き書きして、 ちょっぴり補正すれば (10 年以上も前の古いプログラムなのですっかり忘れてしまった。 合ってることを望む)、 今の火星の北極の向きはおよそ、赤経 21 時 10.7 分ぐらい、赤緯は +52°53′ ぐらいということになる。 赤経・赤緯というのは星空の経緯度みたいなもので、天の赤道が赤緯 0°、 「うお座」の春分点が赤経 0。 赤経は角度の度ではなくて 360° を 24 時間とした時間の単位で表すのが習慣になっている。

星図で確認すれば、これは「はくちょう座」や「ケフェウス座」にはさまれた空の一画。 Google Sky でリンクしてみるとこの辺り (死ぬほど使いづらいな、これ)、

SKY-MAP.org ならこんな。

The original image was created by Torsten Bronger using PP3, © 2003 Torsten Bronger. Modified by M. Hatakeyama. Licensed under GFDL 1.2 or later.

う~ん…。 Wikimedia Commons の画像を手直しした星図も右に。 伝統的な星図の記法は偉大だな。 Google Sky だと座標とかスケールとかないようなので分かりにくいけど、 画面の中央が火星の北極で、北極星にあたるような取りわけ明るい星はそばにないみたい。 右の図だと書き足した赤い点のあたり。 そこから 10° 近く離れたところ、右下の北十字の端には、 「はくちょう座」の 1 等星「デネブ」 (Deneb) がある (Google Sky だと北アメリカの形の北アメリカ星雲が目立つけど、これは肉眼ではほぼ見えない。 デネブはそのちょっと右)。 角度の 10° は、手を伸ばしたときのこぶしの大きさぐらいだってことになっている。 近くでの一番目立つ明るい星としてデネブを火星の暫定北極星に任命しておこう。

このデネブ辺りは天の川の流れの中、銀河の中心とは離れていてこの辺りより北ではだんだん暗くなる。 デネブは「はくちょう」のお尻にあたり、翼は天の川をまたいで拡がっている。 デネブが北極に近いので、火星では、天の川はほぼ南北に横切っているようだ。 そして、あわれ「はくちょう」はお尻を北極にピン止めされてくるくると回っているということになる。

「はくちょう」の右にある小さな星座が「こと座」でその一番明るい星がヴェガ (Vega)、おりひめ星だ。 ひこ星、アルタイル (Altair) の方は天の川を挟んで少し下にある (右図では見えない)。 これらは北極からはもう少し離れていて、おそらく北極からおよそ 20° にいるフェニックスからみれば、 真上からすこし南辺りを通過するだろう。

フェニックスがいるところは白夜の北極圏だけど、大気は薄いので、 チリが少ない日なら天頂方向なら星が見えるかもしれない。 いや、わからないけど。 太陽暦での 7 月 7 日はまだ梅雨であることが多いので、 日本ではなかなかこの日に星空を拝むことができない。 はたしてフェニックスにはおりひめ・ひこ星が見えているだろうか? TEGA が無事でありますようにとテルテール (風見) の代わりに短冊をぶら下げられるといいけどね。

ちょっと面白いことに、というか面白いかどうかわからないけど、 火星から見た太陽は 7 月 7 日に「うお座」の (地球にとっての) 春分点あたりを通過する。 地球の春分点は火星にとっては意味のない方角なので、火星はかまいはしないけれど、 火星から見た星と太陽との角度は赤経・赤緯のデータから簡単に計算できちゃう (Arccos(cos(赤経)∙cos(赤緯)))。 関数電卓をたたくとヴェガが太陽から 83° ぐらい、アルタイルは 63° ぐらいだ。 ちょっとフェニックスから見るには太陽に近すぎるかな?

Sol 41 のフェニックス

Sol 41 は日本時間 2008/07/06 (日) 18:52 ~ 07/07 (月) 19:31 (米太平洋夏時間, PDT 07/06 02:52 ~ 07/07 03:31) ぐらい。

太陽黄経 (Ls) 95°, 太陽と地球との間の角度 27°.2, 地球までの距離 3.22 億 km, 太陽高度 3°.3〜46°.9

Twitter 翻訳

(Twitter / MarsPhoenix より。 火星現地時間はおおよそ)

Sol 41 10:06 (07/07 05:15 JST, 07/06 13:15 PDT)
@_OM_ 腕は厚い氷の層を割れないけど、ブレードで氷を削り取れるし、 サンプルに穴を開けるのにモーター付きの「やすり」も使えるよ。

ロー・イメージより

(Sol 41 Raw Images より後日作成)

残った土壌を湿式化学実験装置 (WCL) に供給した。 WCL の 2 つめのサンプルとなる。 上段は供給中のロボット・アーム・カメラによる画像。 このままだと分かりにくいがファネル内やこぼれた土壌に変化が見える。 また、土壌に刺して熱・電気伝導度を測る探針 (TECP) の最初のテストも行われた。 ただしこの日は控えめに接近させたようで、接触にはいたっていない。 下段の画像が連続写真の一部。 TECP は画面右上の箱状に見えるもので、よくみると探針が飛び出している。


#10339 (Sol 41 12:39)

#10340 (Sol 41 12:45)

#10616 (Sol 41 12:55)

#10351 (Sol 41 15:49)

#10355 (Sol 41 15:56)

#10356 (Sol 41 16:00)
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona / Max Planck Institute

2008年7月6日日曜日

Sol 40 のフェニックス

Sol 40 は日本時間 2008/07/05 (土) 18:12 ~ 07/06 (日) 18:52 (米太平洋夏時間, PDT 07/05 02:12 ~ 07/06 02:52) ぐらい。

太陽黄経 (Ls) 95°, 太陽と地球との間の角度 27°.4, 地球までの距離 3.21 億 km, 太陽高度 3°.3〜46°.9

Twitter お休み。 うんうん、わかってたよ。

ロー・イメージより

(Sol 40 Raw Images より後日作成)

スタッフお休み継続中。 おそらくパノラマ撮影の一環の画像だろうけど、北の足元にはずいぶん長い距離をころがってる石がある。 着陸噴射のためだろうか?


#10172 (Sol 40 17:11)
方位角 357.6

#10182 (Sol 40 17:15)
方位角 16.7
Courtesy NASA / JPL-Caltech / University of Arizona

Sol 33 から Sol 39 までのまとめ

できごと

Sol 039 日本時間 2008/07/04 (金) 17:33 ~ 07/05 (土) 18:12 ぐらい。
基幹要員を除くスタッフは、独立記念日を挟んだ「一時休止」(stand-down) に入る。 フェニックスは予め決められた画像撮影や気象観測を継続する。
Sol 038 日本時間 2008/07/03 (木) 16:53 ~ 07/04 (金) 17:33 ぐらい。
Sol 34 に採取された『魔女』の土壌の一部がようやく OM に供給される。
Sol 037 日本時間 2008/07/02 (水) 16:13 ~ 07/03 (水) 16:53 ぐらい。
依然サンプルはスコップ内に保持されたまま。 この日に、マーズ・オデッセイ [wikipedia] との「協調観測」(coordinated observation) が行われるが、内容の詳細は不明。
Sol 036 日本時間 2008/07/01 (火) 15:34 ~ 07/02 (水) 16:13 ぐらい。
この日も火星では大きな活動は行われていない。 『魔女』のサンプルの TEGA への供給は、ショートの懸念から断念し、サンプルは MECA の光学顕微鏡 (OM) と WCL への供給が予定される。 TEGA に対しては最初に供給された第 4 オーブンと対角線側にある第 0 オーブンを使用して、氷を多く含むと思われる層が来週以降供給されることとなる [参照 注意! はげしい振動は故障の原因となります]
Sol 035 日本時間 2008/06/30 (月) 14:54 ~ 07/01 (火) 15:34 ぐらい。
火星上では目立つ活動は行われていない。 『魔女』からのサンプルを入れたスコップが TEGA 上の供給位置に移動されているが、地球では TEGA のサンプル供給に関しての検討が続いているものと思われる。 カラー・パノラマ撮影の一環としてデッキ上のパノラマ撮影が行われる。
Sol 034 日本時間 2008/06/29 (日) 14:15 ~ 06/30 (月) 14:54 ぐらい。
『魔女』の左端の小山からサンプルが採取される。 これは sol 25 に『白雪姫 3』から採られた表層土壌のサンプルに次いで 4 つ目のものとなり、TEGA [wikipedia] および MECA [wikipedia] の湿式化学実験装置 (WCL) への供給が予定される [参照 ほとんど完璧なアイシー・ソイル]。 サンプル取得後の溝の底には明るい粉末状の物質が見られる。
Sol 033 日本時間 2008/06/28 (土) 13:35 ~ 06/29 (日) 14:15 ぐらい。
拡張された『白雪姫』の溝、『白雪姫 5』の底の硬い層数ヶ所をスコップの底にあるセカンダリ・ブレード (スクレーパー) で 50 回かき取り、いくつかの土壌の小山が作られる。 この小山は『魔女』(Sorceress) と名づけられ、表層下の土壌と氷の層との境界のサンプルとなることが予定される。 かき取った部分の一部は再び暗いシミとして見える [参照 白雪姫にだってシミはあるのだ]

ロー・イメージ

プレス・リリース

(2008/06/29 〜 07/05, 日付は米太平洋夏時間, PDT, に基づく)