いよいよ今週は氷のサンプルの採取。 TEGA のふたを開けたり氷を削ったりと準備に数日かかるかもしれないが、 採取後は氷が昇華しちゃう前に今度は大急ぎで運ばれるはず。 TEGA が使えるのはこれで最後になっちゃうかもしれない。 ただまだ週が明けたばかりで情報はほとんどないので、七夕にちなんで星空の話でもしてみる。 ただしちょっと火星版で。
火星は 6 月 25 日の夏至を過ぎたところで、 これは地球の夏至と 4 日違いだった。 これはまあ偶然。 季節を決めるのは自転軸の傾きだけど、 火星の自転軸の公転面の軸に対する傾きは 25° ほどで、地球 (23° ほど) とも近い。 ただその自転軸の向きはぜんぜん違う。 地球では自転軸を北に伸ばすとたまたまそばに北極星があって、 だからあの北極星が私たちの北極星となっている。 火星ではまた北の空を回る星々は星空の別の位置となる。 それはどこか?
もうずいぶん前になるけど、望遠鏡でのぞいたときに火星のどこが見えているか知りたくて、 この火星の自転軸の向きをさんざ調べたことがある。 今なら手近な天文ソフトがそんなこと知ってても知らずとも、 勝手に計算して火星の模様を CG で表示してくれるかもしれないが、 そのころは自分で計算するしかなかった。 ともかく、調べてみると、 自転軸が「どれだけ」傾いているかならば大概の資料には載っているのに、 当時のネットや本屋で手に入るような一般向けの資料には、 肝心の自転軸が「どっちに」傾いているかまではなかなか載っておらず、 結局、「国立天文台」にまで電話することになった。 国立天文台には一般からの質問を受け付ける専門の部署があって、 偉い先生が「いえ、それは UFO じゃなくて宵の明星、金星です」 なんて応対を迫られてたりする、みたい。
そんな中、 私も「あの、火星の自転軸の向きが知りたいのですが…」 と電話をかけたわけだ。 なかなか最初は話が通じなくて、さんざん知っている数字の答えが返ってきた。 「火星の自転軸の傾きね、 火星の公転に対しては 25° とこれこれですよ…」 「あ、えっと、そーではなくて、その 25° ってのがどっちの 25° なのかってのが…。」 こっちは適切な専門用語を知らずにこんな調子で聞いているものだから、相手も大変だ。 言いたいことを伝えるのに何度かのやり取りが必要だったけど、 ようやくややこしい質問が来たと悟ったらしく、 結局わざわざ半時間も調べていただいたあげくに、求める答えを手にすることができた。
そのときの答えそのものは今はわからなくなってしまったが、 変形した上で自分のプログラムに組み込んだところから抜き書きして、 ちょっぴり補正すれば (10 年以上も前の古いプログラムなのですっかり忘れてしまった。 合ってることを望む)、 今の火星の北極の向きはおよそ、赤経 21 時 10.7 分ぐらい、赤緯は +52°53′ ぐらいということになる。 赤経・赤緯というのは星空の経緯度みたいなもので、天の赤道が赤緯 0°、 「うお座」の春分点が赤経 0。 赤経は角度の度ではなくて 360° を 24 時間とした時間の単位で表すのが習慣になっている。
星図で確認すれば、これは「はくちょう座」や「ケフェウス座」にはさまれた空の一画。 Google Sky でリンクしてみるとこの辺り (死ぬほど使いづらいな、これ)、
SKY-MAP.org ならこんな。
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| The original image was created by Torsten Bronger using PP3, © 2003 Torsten Bronger. Modified by M. Hatakeyama. Licensed under GFDL 1.2 or later. |
う~ん…。 Wikimedia Commons の画像を手直しした星図も右に。 伝統的な星図の記法は偉大だな。 Google Sky だと座標とかスケールとかないようなので分かりにくいけど、 画面の中央が火星の北極で、北極星にあたるような取りわけ明るい星はそばにないみたい。 右の図だと書き足した赤い点のあたり。 そこから 10° 近く離れたところ、右下の北十字の端には、 「はくちょう座」の 1 等星「デネブ」 (Deneb) がある (Google Sky だと北アメリカの形の北アメリカ星雲が目立つけど、これは肉眼ではほぼ見えない。 デネブはそのちょっと右)。 角度の 10° は、手を伸ばしたときのこぶしの大きさぐらいだってことになっている。 近くでの一番目立つ明るい星としてデネブを火星の暫定北極星に任命しておこう。
このデネブ辺りは天の川の流れの中、銀河の中心とは離れていてこの辺りより北ではだんだん暗くなる。 デネブは「はくちょう」のお尻にあたり、翼は天の川をまたいで拡がっている。 デネブが北極に近いので、火星では、天の川はほぼ南北に横切っているようだ。 そして、あわれ「はくちょう」はお尻を北極にピン止めされてくるくると回っているということになる。
「はくちょう」の右にある小さな星座が「こと座」でその一番明るい星がヴェガ (Vega)、おりひめ星だ。 ひこ星、アルタイル (Altair) の方は天の川を挟んで少し下にある (右図では見えない)。 これらは北極からはもう少し離れていて、おそらく北極からおよそ 20° にいるフェニックスからみれば、 真上からすこし南辺りを通過するだろう。
フェニックスがいるところは白夜の北極圏だけど、大気は薄いので、 チリが少ない日なら天頂方向なら星が見えるかもしれない。 いや、わからないけど。 太陽暦での 7 月 7 日はまだ梅雨であることが多いので、 日本ではなかなかこの日に星空を拝むことができない。 はたしてフェニックスにはおりひめ・ひこ星が見えているだろうか? TEGA が無事でありますようにとテルテール (風見) の代わりに短冊をぶら下げられるといいけどね。
ちょっと面白いことに、というか面白いかどうかわからないけど、 火星から見た太陽は 7 月 7 日に「うお座」の (地球にとっての) 春分点あたりを通過する。 地球の春分点は火星にとっては意味のない方角なので、火星はかまいはしないけれど、 火星から見た星と太陽との角度は赤経・赤緯のデータから簡単に計算できちゃう (Arccos(cos(赤経)∙cos(赤緯)))。 関数電卓をたたくとヴェガが太陽から 83° ぐらい、アルタイルは 63° ぐらいだ。 ちょっとフェニックスから見るには太陽に近すぎるかな?


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